○網走市環境基本条例

平成14年3月28日

条例第16号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 環境の保全及び創造に関する基本方針等(第7条・第8条)

第3章 環境の保全及び創造に関する基本的施策(第9条―第28条)

附則

北海道の北東部、北緯44度、網走国定公園の中心に位置する網走市は、知床連山を望むオホーツク海に面し、網走湖、能取湖、藻琴湖及び涛沸湖の4つの湖並びに網走川を有する水の豊かな街であるとともに、内陸部は森や農村地帯が広がる緑豊かな街である。また、原生花園があってオオハクチョウの飛来する恵まれた自然に抱かれた街であり、冬には、我が国で唯一流氷が訪れる地方であり、鮮明な季節感を有する街である。このような環境の豊かな恵みを受けて、網走市は農林水産業や観光等の産業が今日まで発展してきた。

一方、今日の私たちは、生活様式の変化や経済活動の拡大等により、大量の資源やエネルギーが消費されるとともに、処理が困難な廃棄物が増え、環境ホルモン、ダイオキシン類及び化学物質等による環境汚染等、新たな問題も顕在化してきており、私たちの身近な環境に様々な影響を及ぼしてきている。さらには、地球温暖化等により、私たちの生存の基盤である地球環境が脅かされるに至っている。

私たちは誰もが、健康で安全・快適でかつ文化的な生活を営むことができる良好な環境を享受する権利を有している。私たち人類が生存の基盤としているかけがえのない環境を健全で恵み豊かな状態で保全し、これを、将来の世代に引き継ぐことは、私たちの願いであり、また、使命でもある。私たちは、地球環境の中で生きるものの一員としての自覚を持ち、創意と工夫をこらし、環境の保全及び創造に努めていかなければならない。

今こそ、私たちは、環境へ負荷を与えている現在の生活様式や社会経済構造のあり方を見直して、自然の中で生きてきたモヨロ等先人達の知恵と歴史に学び、また、現代の私たちが持てる科学的知見を最大限に生かすことにより、失われつつある自然の回復に努め、環境への負荷の少ない循環型・環境保全型社会を築いていかなければならない。

このような認識に基づき、すべての市民が健康で文化的な生活を営むことができるように、市、事業者、市民が協働して、環境にやさしい循環型社会を基調とした持続的発展が可能な社会の実現、及び、人と自然が共生できる豊かな環境の保全及び創造を目指し、ここに、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって、現在及び将来の市民が健康で文化的な生活を営むうえで必要とする良好な環境を確保することを目的とする。

(用語の定義)

第2条 この条例において「環境の保全」とは、環境を良好な水準に保ち、維持することをいう。

2 この条例において「環境の創造」とは、良好な環境が維持できるよう、又は健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受できるよう、これらの環境の要素を創り出すことをいう。

3 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全又は創造上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

4 この条例において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

5 この条例において「公害」とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境その他の自然環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。

(基本理念)

第3条 環境の保全及び創造は、市民が健康で文化的な生活を営むうえで必要であり、人と自然が調和した良好な環境を確保し、この良好な環境をより質の高いものとして次世代に引き継いでいくことを目的として行われなければならない。

2 環境の保全及び創造は、資源の循環的な利用を促進することによって、人と自然が共生し、環境への負荷が少ない持続的発展が可能な社会が構築されることを目的とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として行われなければならない。

3 地球環境保全は、人類共通の課題であり、市民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保するうえで重要であることから、市、事業者及び市民のすべての者が自らの課題であることを認識し、それぞれの者の日常生活及び事業活動において、自主的かつ積極的に推進されなければならない。

4 前3項の理念は、市、事業者、市民のすべての者がそれぞれの責務を認識し、公平な役割分担の下、自主的かつ互いに協働して推進されなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、基本理念にのっとり、市民の意見を適切に反映して、環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 市は、基本理念にのっとり、環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定及び実施に当たっては、環境の保全及び創造に努めるとともに、環境への負荷の低減に率先して努めなければならない。

3 市は、市、事業者及び市民が互いに協働が図られるように努めなければならない。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、基本理念にのっとり、事業活動を行うに当たっては、環境への負荷の低減に努め、その事業活動に伴って生ずる公害を防止するとともに、自然環境を適正に保全するために必要な措置を講じなければならない。

2 事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工、販売又はサービスの提供その他の事業活動を行うに当たっては、それらの製品等が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めなければならない。

3 事業者は、事業活動を行うに当たっては、その事業活動における廃棄物の発生を抑制し、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めるとともに、技術的及び経済的状況に応じ、再使用又は再生利用が可能な製品の開発及び供給に努めなければならない。

4 事業者は、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有するとともに、地域社会に調和した事業活動が行えるように、市、他の事業者及び市民と協働して、環境の保全及び創造に努めなければならない。

(市民の責務)

第6条 市民は、基本理念にのっとり、日常生活において、自らの行動により環境に与える影響を認識し、廃棄物の適正処理及び排出の抑制並びに資源やエネルギーの節減及び環境への負荷の低減に資する製品等の利用に努めなければならない。

2 市民は、基本理念にのっとり、その日常生活において、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するとともに、地域社会と協働して環境の保全及び創造に努めなければならない。

第2章 環境の保全及び創造に関する基本方針等

(施策の基本方針)

第7条 環境の保全及び創造に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ、総合的かつ計画的に行うものとする。

(1) 人の健康が保護され、生活環境が保全され、自然環境が適正に保全され、大気、水、土壌その他の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。

(2) 生態系の多様性が確保され、野生生物の種の保全が図られ、森林、緑地、農地、湿地、湖沼、河川、海域等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて適正に保全されること。

(3) 人と自然との豊かなふれあいを確保するとともに、地域の個性を生かした良好な景観の形成、歴史的文化的遺産の保全及び活用を図ることにより、潤いと安らぎのある良好な快適環境を確保すること。

(4) 人と環境とのかかわりについて理解を深め、廃棄物の排出抑制と適正処理、資源の循環的利用、エネルギーの有効利用及び自然エネルギーの利活用を促進することにより、環境への負荷の少ない循環型社会を構築すること。

(5) 地球環境保全に資する施策を積極的に推進するとともに、国際協力を推進すること。

(環境基本計画)

第8条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画(以下この条において「環境基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 環境の保全及び創造に関する長期的目標

(2) 環境の保全及び創造に関する基本的施策の方向

(3) 環境の保全及び創造に関する配慮の指針

(4) その他環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、市民の意見を反映することができるように必要な措置を講じ、網走市環境保全審議会(網走市附属機関条例(平成12年条例第24号)別表に掲げるものをいう。以下同じ。)の意見を聴くとともに、計画を策定したときは、速やかに公表しなければならない。

4 前項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

第3章 環境の保全及び創造に関する基本的施策

(環境白書の作成)

第9条 市長は、毎年、市民に環境の状況並びに環境の保全及び創造に関する施策の実施状況を明らかにするため、網走市環境白書を作成し、公表しなければならない。

(規制の措置)

第10条 市は、公害の原因となる行為及び自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、必要な規制の措置を講ずるものとする。

2 前項に定めるもののほか、市は、人の健康又は生活環境に係る環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるよう努めるものとする。

(経済的措置)

第11条 市は、市民と事業者が環境への負荷の低減のための施設の整備その他環境の保全及び創造に資する措置をとることを助長するために必要があるときは、適正な助成その他の措置を講ずるように努めるものとする。

(省資源、省エネルギー等の取組み、廃棄物の排出抑制)

第12条 市は、環境への負荷の低減を図るため、市民及び事業者による廃棄物の排出抑制、資源の循環的利用、エネルギーの有効利用及び自然エネルギーの利活用が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。

2 市は、環境への負荷の低減を図るため、市の施設の建設、維持管理その他の事業の実施に当たっては、廃棄物の排出抑制、資源の循環的利用、エネルギーの有効利用及び自然エネルギーの利活用に努めるものとする。

3 市は、環境への負荷の低減に資する製品等の利用を自ら推し進めるとともに、市民及び事業者による当該製品等の利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(環境保全に関する施設の整備等)

第13条 市は、下水道、廃棄物の公共的な処理施設その他の環境の保全上の支障を防止するための施設の整備を図るため、必要な措置を講ずるものとする。

2 市は、公園緑地その他の公共的施設の整備及び健全な利用促進を図るため、必要な措置を講ずるものとする。

(環境影響調査)

第14条 市は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を行う事業者が、あらかじめその事業に係る影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(自然環境、緑地等の保全)

第15条 市は、人と自然が共生できる基盤としての緑豊かな環境の確保を図るため、森林、緑地、農地、湿地等の保全、緑化の推進及び身近な自然環境を活かした都市景観の保全その他必要な措置を講ずるものとする。

2 市は、良好な水環境を保全するため、河川、湖沼、海域等の水質の保全、親水性の高い水辺空間の創造その他必要な措置を講ずるものとする。

3 市は、野生生物の多様性を損なうことがないよう適正に保護するため、その生息環境の保全その他必要な措置を講ずるものとする。

(歴史的遺産・美観等の保持)

第16条 市は、前条に掲げるもののほか、水と緑に恵まれた豊かな環境を保全し、及び創造するため、緑化及び美化の推進、親水性の高い水辺空間の創造、歴史的文化的遺産の保全その他必要な措置を講ずるものとする。

2 市は、市民及び市外から来訪する観光客等が水と緑に恵まれた豊かな自然環境を享受できるよう、美観の維持、自然と調和した魅力ある景観の保全及び創造その他必要な措置を講ずるものとする。

(環境学習の推進)

第17条 市は、市民及び事業者が環境の保全及び創造について理解を深め、環境の保全及び創造に関する活動が促進されるように、環境の保全及び創造に関する学習の推進を図るものとする。

2 市は、特に児童及び生徒の学習を積極的に推進するために必要な措置を講ずるものとする。

(市民等の意見の反映と市民参加)

第18条 市は、環境の保全及び創造に関する施策の策定及び推進に当たっては、市民及び事業者の意見の反映及び参加の機会の確保に努めるとともに、必要に応じて網走市環境保全審議会の意見を聴くものとする。

2 市は、児童及び生徒の意見の反映及び参加の機会についても配慮するものとする。

(市民や民間団体の自発的な活動の推進)

第19条 市は、市民、事業者又はこれらの者が組織する民間の団体(以下「民間団体」という。)が自発的に行う環境の保全及び創造に関する活動が促進されるように、必要な支援の措置を講ずるものとする。

(事業者の環境管理の促進)

第20条 市は、事業活動に伴う環境への負荷の低減を図るための事業者の環境管理に関する取組みが促進されるように、必要な支援の措置を講ずるものとする。

2 市は、事業者の自主的な環境監査が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(事業者との協定の締結)

第21条 市長は、事業活動に伴う環境への負荷の低減を図るため特に必要があるときは、事業者との間で環境への負荷の低減に関する協定を締結するものとする。

(環境情報の提供、調査・研究・監視)

第22条 市は、環境の保全及び創造に関する情報の収集に努めるとともに、環境学習の推進及び民間団体等の自発的な活動の促進に資するため、必要な情報を適切に提供するよう努めるものとする。

2 市は、環境の状況、環境の保全及び創造に関する情報を公開するため、必要な措置を講ずるものとする。

3 市は、環境の保全及び創造に関する施策を策定し、適正に実施するために必要な調査、研究、監視等を行うとともに、これらを行うために必要な体制の整備に努めるものとする。

(冬期の環境保全等)

第23条 市は、冬期における快適な生活環境の保全及び創造を図るため、冬期におけるエネルギー消費の増加等冬期に特徴的な環境負荷の増大に起因する環境の保全上の支障の防止に努めるとともに、雪又は流氷の利活用等冬期の特性を活かした環境の保全及び創造に資する施策を推進するものとする。

(国等との協力)

第24条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するに当たり、国及び他の地方公共団体との連携協力に努めるものとする。

2 市は、市域外へ及ぼす環境への負荷の低減に努めるとともに、網走湖の水質保全等特に広域的に取り組む必要があるときは、関係する地方公共団体との緊密な連携協力に努めるものとする。

(推進体制の整備)

第25条 市は、市の機関相互の緊密な連携及び施策の調整を図り、環境の保全及び創造に関する施策を推進するための体制を整備するものとする。

2 市は、環境の保全及び創造に関する施策を効率的かつ効果的に推進するため、市、事業者、市民及び民間団体が協働することのできる体制の整備に努めるものとする。

(財政の確保)

第26条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるように努めるものとする。

(地球環境保全に関する施策の推進・国際協力の推進)

第27条 市は、地球温暖化の防止、オゾン層の保護、海洋汚染の防止等地球環境保全に資する施策を積極的に推進するものとする。

2 市は、国、他の地方公共団体と連携し、地球環境保全に関する情報の収集及び提供により、地球環境保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。

(環境監査)

第28条 市は、環境に負荷を与えている自らの活動に対する環境への配慮の状況を検査することにより、自ら環境監査の実施に努めるものとする。

この条例は公布の日から施行する。

(平成15年条例第7号)

(施行期日)

1 この条例は、平成15年4月1日から施行する。

網走市環境基本条例

平成14年3月28日 条例第16号

(平成15年4月1日施行)

体系情報
第8編 生/第4章 環境保全
沿革情報
平成14年3月28日 条例第16号
平成15年3月13日 条例第7号